3年かけてドラゴンクエストビルダーズ2をクリアした

 発売日に購入した『ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島』を先日ようやくクリアした。

 2018年の12月20日に発売したこのゲームを3年越しにクリアしたわけではなく(サンドボックスゲームの特性上3年遊べるゲームではあるが)、3年前に途中でやめてしまったものを、最初からプレイし直してクリアしたのだ。

 当時途中でやめてしまった原因は、このゲームが面白くなかったから――ではない。なんなら2018年のゲームの中で一番面白いとさえ思ったゲームだった。なのになぜ途中でプレイをやめてしまったのか、それはこのゲームに感情移入しすぎたからだった。

 

 ドラゴンクエストビルダーズとは、サンドボックスアクションRPG要素とドラクエのストーリーを付与したゲームだ。わかりづらければ『ドラクエのキャラとストーリーがついてるマインクラフト』という理解でおおよそ間違いない。

 ビルダーズ1が発売された当時はサンドボックス型のゲームがまだ多くないこともあり、マインクラフトのパクリだと騒がれていた。実際ドラゴンクエストというIPは、他のジャンルのゲームにドラクエというガワを取り付けてスピンオフ作品を濫造するという手法をよくとるし*1、この『ビルダーズ』もその例には漏れていないように思えた。

 しかしいざやってみると、『ビルダーズ』はただのマインクラフトのパクリではなかった。サンドボックスではあるものの、マインクラフトやあつまれどうぶつの森のような、ものづくりに軸を置いたゲームではない。ものづくり要素はあくまでキャラクターや世界観を構築するための要素として使われており、ものづくりを通してビルダーズの物語体験を楽しむのがこのゲームの真髄なのだ。つまりこのゲームはドラクエ風のマインクラフト』ではなく『マインクラフト風のドラクエと呼称するのが正しい。

 ビルダーズではNPCは夜になると寝るのだが、拠点に来たばかりの何もない頃は地面に素のまま寝転がって寝てしまう。そのうちにNPCから『寝るための部屋を作ってほしい』と依頼される。2マスの高さのブロックで四方を囲み扉を付けた後、中にあかりとベッドを設置するとその場所は部屋として認識される。すると以後はNPCがその部屋のベッドを使って寝泊まりしてくれるようになるのだ。

 マインクラフトでも部屋やベッドは存在するが、それはクリーパーが沸く夜の時間帯をスキップするために、プレイヤーが使うためのものだった。ビルダーズでは部屋、キッチン、食堂、シャワーにトイレ等、作ったものはすべてNPCが使用してくれ、中にはそれによりゲームを進めるうえで有利になるような効果を与えてくれるものも存在する。

 50×50マス程度の広さの拠点の中で、NPCたちの要望に応えながらみんなが生活する街を作り上げる。各施設の構成要素は固定のアイテムなので、誰が作ってもおおよそ同じ形になるが、それを拠点の中でどう配置するかをプレイヤーは試行錯誤することになる。見栄えをとるか、機能性をとるか、NPC動線を考えて最適化してみたり、自分用の部屋だけはちょっと特別な高い位置に作ってみたり。与えられた箱の中をどう埋めていくかを試行錯誤する感覚は、街づくりゲームに近い。

 作ってほしいものはNPCから依頼されるし、作ること自体は簡単にできるが、どこにどんな風に作るかという部分で各プレイヤーの個性を出すことができ、なおかつ出来上がったモノはNPCが利用してゲームとしてのメリットも与えられるため、造り上げた成果物が自己満足で終わることはない。凄いモノを作り上げることができなくても楽しく遊べるビルダーズは、『1人で遊ぶサンドボックスゲーム』として最適化されているのだ。

 サンドボックス要素はありながらも、道中で出会うキャラクターからの依頼に答えながら魔物と戦うというドラゴンクエストの文脈もしっかりと維持されている。だからこそ自分で作ったモノを使って生活するNPCにはより愛着がわくし、作った街を破壊しに来る魔物にはより憎悪する。ボス戦のゴーレムが巨大な岩を投げる攻撃で街を半壊させたときは結構本気で怒ったりもした。

 ものづくりを通して物語やキャラクターへ感情移入させる『マインクラフト風のドラクエ』のゲーム体験は、本家ドラクエよりもリアルなものとして楽しめた。

 

 満を持して発売されたビルダーズ2では様々な要素が追加されたが、中でも大きいのは相棒キャラクターの存在だろう。

 『ハーゴン教団』によってモノづくりが禁忌とされた世界で、『ビルダー見習い』である主人公はハーゴン教団に捕まっていた。そんな主人公が乗せられていた船が嵐により難破してしまい、無人島に漂流してしまう。同船者の屍が並ぶ海岸を歩いていると、自らを『シドー』と名乗る記憶喪失の少年と出会う。ビルダー見習いの主人公と、記憶喪失の少年シドー。二人はこの何もない『からっぽ島』をビルダーの力によって栄えさえていくため、素材を集めに様々な島へと冒険に向かう……というのが本作のストーリーだ。

 ドラゴンクエストを知っている人なら『2』で『シドー』と言われてピンとくるだろう。この少年の正体は、本家『ドラゴンクエスト2 悪霊の神々』のラスボス『破壊神シドー』の生まれ変わりなのだ。本人は記憶喪失なため自分の正体に気づいていないが、彼の粗野で不躾な言動にその片鱗を感じることができる。

 『ビルダー』である主人公は勇者ではないため、戦闘能力は決して高くない。そこを補ってくれるのがシドーだ。彼は持ち前の破壊力を生かして、非力な主人公の代わりに魔物との戦闘を担ってくれる。もちろん主人公も武器を装備して攻撃することはできるが、シドーのほうが倍ほどダメージを出してくれるので、戦闘は基本的にシドーにお任せすることになる。また主人公が素材を集めたりしている最中に妨害をしにくるモンスターを、代わりに引き受けて倒してくれたりもするので、ゲームシステム上でもとても頼りになる相棒となる。

 最初は粗暴なシドーだったが、人との交流を経ていく中でどんどん人間味を増していき、物語上でも主人公との相棒関係が成熟してきたころ、3つ目の島ムーンブルクでとある事件が起こる。

 ムーンブルクではハーゴン教団との戦争が行われていた。戦争は長い間続いており、残っているのは王様とその臣下の数名のみ。そこにやってきた主人公たちは、崩れてしまった城を再建して防御を固め、ハーゴン教団への反抗を画策する。その最中、再建した城の中で仲間の死体が見つかる。敵の魔物が侵入してきた形跡はないため、城の中にスパイがいるのではないかという疑いが持ち上がった。そこに白羽の矢が立ったのがシドーだ。主人公は否定するものの、彼の粗暴な言動や鬼神のような戦い方に、周りからは疑念の声が続々と上がってくる。

 そんな中、あるキャラクターからいつ何が起こるかわからないからと、牢屋の作成を依頼される。作成が完了し報告すると、なんとすぐさまシドーが投獄されてしまう。牢屋の中のシドーからは『俺を入れるためにこの牢屋を作ったのか』と責められ、助けることもできないまま物語は進む。結局牢屋を作る依頼をしたキャラクターがスパイだったことが判明し、シドーの疑いは晴れることになったが、牢屋から出てきたシドーからは絶交を宣言されることになる。

 その後も結局仲直りすることのできないまま、ムーンブルクハーゴン教団を倒すことになる。祝宴の宴を行っている最中に会いにいくも、『島に戻ったら俺たちの関係は終わりだ』と宣言される。

 ここで私はSwitchをスリープモードにしてプレイをやめた。――分かってはいるのだ、このまますれ違い続けた挙句敵対して終わりを迎えるなんて悲しい結末が訪れるわけもなく、最後には仲直りして大団円を迎えるだろうことは。しかしそれまで積み上げてきたシドーとの友情に亀裂が入り、仲直りすることもできずに落ち込み続ける主人公を見るのがどうしても耐えられなかった。

主人公の表情が笑顔一辺倒なことをちょくちょくキャラクターからいじられるのだが、

 喧嘩後はずっと口角が下がった状態になり周りから心配されまくる。これがめちゃくちゃ辛い。

 少し冷却期間を置いてから再開しようと思い、ビルダーズ2にのめり込んでいたせいでプレイできずにいた『JUDGE EYES:死神の遺言』をやり始めた。これがまためちゃくちゃ面白くてドはまりしたこともあって、いつの間にかビルダーズ2のことを忘れてしまっていた。

 

 それから3年経ったある日。引っ越しに伴い部屋の整理をしていた際、このゲームのパッケージを見つけた。そういえばクリアまでやってなかったことを思い出し、荷造りの面倒くささから逃げるように最初からプレイを始めた。

 事前に展開がわかっていたこともあり、例のシーンは当時ほどダメージを受けることはなく、今度は投げ出さずにプレイできた。その後の展開は案の定というか予想通りで、3年かけてようやく主人公とシドーは仲直りを果たすことができた。

 私の作ったからっぽ島で、主人公とシドーは今日も同じ部屋で眠っている。 



 

 

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*1:特に顕著な例としてはライバルズ(ハースストーン)、ウォーク(ポケモンGO)辺り