アクションRPGパートはベースのシステムを継続しながら、ゲームシステム部分に作品ごとの独自要素を出してきたイースシリーズ。『イースVIII -Lacrimosa of DANA-』ではアドルとダーナの二人の視点から織り成す物語が、『イースIX -Monstrum NOX-』では空中を自在に駆ける立体アクションが、独自要素の中でも特筆して優れていた要素であった。
本作『イースX -NORDICS-』における独自要素としては、海峡の中にある島々を渡る船を拠点とした海戦要素がまず挙げられるが、本作がシリーズの中でも優れている要素として、アクションパートのシステムが従来の仕様から大きく変更された点を挙げたい。
従来のイースシリーズ*1のアクションのシステムは、通常攻撃とスキル攻撃に加えて回避とガードがあるアクションRPGとしては極々基本的な操作内容だった。
上級テクニックの項目に記載されている『フラッシュムーブ』と『フラッシュガード』がアクションの肝であり、攻撃の直前に回避やガードをするとボーナスを得られるため、いかに敵の攻撃にうまくそれらを合わせられるかを突き詰めるアクションゲームだった。しかしこれらの要素は「成功すればボーナスが付く」程度であり、戦闘において必須となるシステムではなく、またフラッシュムーブとフラッシュガードに明確な使い分けを求められるようなデザインではなかった。
つまり根本的には「敵の攻撃を避けるか守るかして、その隙に攻撃をする」というアクションゲームにおける基本的な要素だけが求められるシステムであった。
一方本作『イースX -NORDICS-』のアクションが従来から変化した点として、大きくは『フラッシュムーブ』が削除された点と『リベンジゲージ』が導入された点が挙げられる。
リベンジゲージは敵の攻撃をガードすると増加し、コンビスキルのダメージの倍率が上昇する。リベンジゲージの上限値は冒険中にアイテムの効果で増加していき、最終的には四、五倍まで増加するため、うまく扱えば効率よくダメージを与えられる。またジャストガードを決めるとリベンジゲージの上昇率が通常より増加する。フラッシュムーブが削除されたことに伴い、基本的にはプレイヤーは敵の攻撃をガードによって防御することになる。
このリベンジゲージの導入によって、本作におけるアクションの基本の動きが「通常攻撃やソロスキルで攻撃⇒敵の攻撃をガードしてリベンジゲージを溜める⇒最大値近くまで溜まったらコンビスキルを一気に叩き込む」という明確にゲーム側でデザインされた形に規定された。これによって防御行動の成果がリベンジゲージという形で明確にポイント化され、防御というアクションゲームにおいてプレイヤーがつまらないと感じる行為が、次の攻撃行動へのチャンスに繋がるゲージを溜める行為に変換されたのだ。*2
また敵の攻撃の際、赤いオーラをまとうと『ガードをしないと防げない攻撃』、青いオーラをまとうと『回避をしないと防げない攻撃』が繰り出される。これはガードを強制させることでリベンジゲージを稼がせたり、また回避を強制させることでガードをし続けてノーリスクでリベンジゲージを稼ぐ行動を拒否させたりと、リベンジゲージのシステムをプレイヤー側に適切に行わせるように、敵の動きもシステムでデザインされているのだ。
これまでの野放図なアクションではなく、このようにしっかりとデザインされたアクションの面白さこそが本作の最も優れた点だと言える。
本作がこのようなデザインされたアクションのシステムを導入した理由は、近年の高難易度アクションゲームの広がり*3に影響を受けてのことだと推測される。そう考えると、前作の『イースIX -Monstrum NOX-』(2019年9月26日発売)について、立体アクションが特徴的で面白かった要素として挙げたが、これも開発/発売時期にオープンワールドゲームで立体アクションが流行っていた*4ことを受けて取り入れた要素だと考えられる。
総じて、イースシリーズはアクションゲームの流行の潮流を見逃さず、その時々で流行している要素を取り入れる姿勢がみられる。それはつまり、イースシリーズ自体がアクションゲームという枠組みの中で、その時々の流行の指標となる作品としてみることができるということだ。アドルの冒険を追うことは、アクションゲームの歴史を追うことと同義として語ることができるのかもしれない。