難しさと面白さ――ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON

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 十年ぶりのシリーズ最新作となるアーマードコア6。私はアーマードコア(AC)シリーズをやったことがなかったので、本作を高難易度アクションゲームとして取っついた一人なのだが、本作の「ゲームとしての難易度」はかなり高めに感じられた。

 ACシリーズ自体がそもそも難しいゲームとして語られることが多いが、本作はソウルシリーズのような死にゲーとしての難しさが加わっていて、既存のACコアシリーズとは別物だと語られることもある。ACシリーズ初見の私にはそこの違いがわからないため、本作が何故難しいのかに絞って原因分析をしていきたい。

 

管理すべき情報量が多い

 以下はボスとの戦闘中の画面である。上下にバーが出てるのはアクションゲームでは見慣れた画面構成だが、敵に向かって円形の線があり、その付近にバーがたくさん出ていることがわかるだろうか。

 大きな円形の白い線の右下と左下に二つずつ出ているゲージが使用している武器のクールタイムを表している。円の上にある黄色いゲージが敵のACSゲージで、これを一杯にすると敵がスタッガー状態になり大ダメージを与えるチャンスになる。ちなみにこの黄色いバーの下側(白い円の上部分)は敵のAP(体力)ゲージになっている。

 また円の内にある赤い照準が使っている武器の照準で、これが合わないと敵に弾が向かわない(最初はぶれているが時間経過により自動で補正が合うため、タイミングを見て武器を打つ必要がある)。さらに赤い照準の左上にある黄色いゲージはマルチロックオンの進捗を表したゲージだ。

 

 このように、通常のアクションゲームと比べても戦闘中に管理すべきゲージの数が多い。アクションゲームの基本である敵の動き/自分の動き以外に、これだけたくさんのゲージの状態を管理する必要があるのはプレイにおける負荷を上げる。加えて画面にあるゲージを目で見て状態を把握する必要があるため、広い周辺視野を持っていない場合は目線を動して各ゲージを視る必要があることも難易度を上げる要因だ。

 ただしこの点についてはシステム側で「音声によるアナウンス」という形でフォローされている。AP(左下のゲージ)が50%/30%を切る、武器の残弾数(右下の数字)が50%/30%を切る、リペアキット(左下のREPAIRの数字)を使用すると、それぞれ音声でアナウンスが入るため、それをちゃんと聞いていれば左下と右下の情報は目で追う必要がなくなる。また画面上部にあるゲージは敵のAP/ACSゲージなため、大きな円形の白い線の上部に表示されているものと同一である。

 つまり実質的に目で視ておく必要があるのは、大きな円形の白い線付近と画面下部中央のゲージ(自機体のEN/ACSゲージ)なため、それがわかっていれば(情報量の多さは変わらないが)周辺視野が狭くともなんとか対応ができるようにはなっている。

攻撃を避けるのが難しい

 アクションゲームの基本である「相手の攻撃を避ける」ことに対して、本作独自の難しさがいくつか存在する。

  • 緊急回避(クイックブースト)に無敵判定がない。そのため敵の攻撃に合わせて回避することで攻撃を避けるのではなく、回避行動によって敵の攻撃範囲から逃れた安全な位置に移動することで避けなければならない
  • 敵の攻撃のほぼすべてに自機に対してのホーミングがついているため、ある程度攻撃を引きつけた上で逆サイドに避ける動きが求められる
  • ジャンプだけでなくホバリングによる上昇ができるため、前後左右に加えて上下も加えた回避行動を求められる攻撃がある
  • 後半のボスは出が早い上に範囲が広くて火力が高い攻撃が多い

 総じて敵の攻撃の種類に合わせて適切なアクションを取らないといけない(=手なりで適当に緊急回避をしても避けられるパターンが少ない)ことに加えて、そもそも避け方がわからない攻撃が多々あることも難しさの要因だろう。

 避け方を見つけられないと「この位置でこの攻撃をされると絶対に避けられない」という状況になるため、確定ダメージの攻撃が定期的に発生することになってしまうのだ。

重火器を打つ時などの足を止めてしまっているタイミングに振られると避けられない攻撃がある

攻略法への誘導が不親切

 本作において特に詰まりやすいボスは、チュートリアルステージのボス『ヘリコプター』と、Chapter1最終ステージのボス『バルデウス』の二体だろう。求められるアクションの難しさもあるのだが、この二体に関しては「攻略法の見つけづらさ」が難易度の上昇に要因になっている。そのためゲーム側で想定している以上の難易度になっている節がある。

ヘリコプター

 『ヘリコプター』の基本的な攻略法は「右手武器でACSゲージをある程度溜めたらボスに急接近して左手のブレードで斬る」ことなのだが、左手武器のブレードの使い方の説明がチュートリアルに存在していないし、スタッガー状態の説明もない。

 右手武器(R1/R2)については道中で暗転停止して動画までついた非常に丁寧な説明が表示される。

 しかし左手武器については画面に小さく左手武器が使えることが表示されるだけなので、そもそもL1/L2も武器攻撃ができるボタンだと気づかないプレイヤーもいるのではないだろうか。*1ブレードにしても普通にL1ボタンを押すのと長押しするのとで挙動が違うので、そこの説明もチュートリアルに加えてもよかったはずだ。

ブレードに対する唯一の案内箇所だが、え、ブレードって何?と戸惑った

 スタッガー状態になると敵に与えるダメージが飛躍的に上がる。そのため本作の戦闘の基本はACSゲージをためた後スタッガー状態になったタイミングで一気に攻撃を叩きこむことになる。しかしそこを気づかせる導線が(特にチュートリアルステージで)薄いことが、難易度を上げる要因になってしまっていることは、このゲームの面白いポイントまでたどり着くプレイヤーを減らす結果になってしまっているためもったいなく感じる。

バルデウス

 『バルデウス』はパルスシールドの耐久値を削らない限りダメージを与えられず、破壊しても一定時間でシールドが復活するのが厄介なボスだ。シールドを削り、本体にダメージを与えてACSゲージを削り、スタッガー状態になったタイミングで一気に攻撃を畳みかけるというのが基本の動きになるが、相手の耐久ゲージがなくなるタイミングと自分の武器のクールタイムを合わせたり等、実践するとこれが意外に難しい。

 それに対するシステム側の補助として、このパルスシールドに対して特攻ダメージを与える武器が販売されている。これを装備するとパルスシールドがかなり削りやすくなり戦いやすくなるのだ。

 ただ『バルデウス』と戦う前の段階で店売りされているこの武器を見ても、どういう効力を発揮するかを察せられるプレイヤーはあまりいないだろう。プレイヤーの動きとしては「バルデウスに勝てない」⇒「アセンブリで装備を見直してみる」⇒「パルス防壁に効く武器があるのでこれに切り替える」になるのだが、ミッション失敗時の選択肢にストアから新しい武器を買う項目が存在していないアセンブリで武器の付け替えはできるのだが、あらかじめ購入してある武器にしか変更ができないのだ。

 『バルデウス』というボス自体は、このゲームが「状況によって適切な機体設定をアセンブリすることで攻略しやすくなる」というこのゲームの基本的なゲームスタイルを教えてくれるいいボスなのだが、『一度ミッションを諦めてストアに行き、メタ武器があることに気づく』ことに対するゲーム側の誘導が薄いせいで、ゲーム内でうまく機能していない点が惜しまれる。

 

 

 以上の点が本作の難しさの主要因だ。このゲームの特に序盤が難しい要因は、存在している攻略法にプレイヤーが気づきにくい(気づけない)ことにある。その原因は単にゲーム内で仕様の説明が不足していることに起因しているため、「攻略法を見つける面白さ」に繋がった難しさではないことは問題だと言えるだろう。

 ある程度ゲームの仕様が分かった上でアセンブリのパーツも増えてくる中盤以降は、正当な高難易度ゲームとしての面白さがあるのだが、そこにたどり着くまでにふるい落とされるプレイヤーが多く出るだろう序盤の難易度設計(というより説明不足)は勿体なく感じる。

*1:R1/R2武器には丁寧に使い方の説明が入ってたから、そこの説明にない別の武器があることに気付きにくくもなっている