何故彼らを見捨てなかったのか――十戒/夕木春央

bookclub.kodansha.co.jp 「犯人は、自分の罪を暴かれたら身の破滅だから、その時は全員を道連れにするっていうのが、さっきの話でしたよね。でも、よくよく考えてみると、犯人には別の選択肢もあります。他の全員を殺して、自分だけ助かるっていうことにし…

信仰が生む狂気――名探偵のいけにえ/白井智之

本作はかつてアメリカで発生した『人民寺院集団自殺事件』という実在する事件をモデルとしている。900人以上の死者が発生した実在する事件をモデルにした時点で既にかなりセンセーショナルだが、それに加えて『特殊設定ミステリ』でかつ『多重解決モノ』と、…

二人の関係が暗示する未来――栞と嘘の季節/米澤穂信

栞と嘘の季節 (集英社文芸単行本) 作者:米澤穂信 集英社 Amazon 前作『本と鍵の季節』の時から『嘘』は通底したテーマではあったが、今作は特に嘘が多く、登場人物全員が何かしらの嘘を吐いている。ただその嘘の大半は「情報を持っているのに個人的な事情か…

何故彼らは死ななければならなかったのか――方舟/夕木春央

方舟 作者:夕木春央 講談社 Amazon 地震により扉が岩でふさがれ、山奥の地下建築に閉じ込められた主人公たち。加えて地盤から徐々に水が流れ込んできており、一週間もすれば水没してしまう。そんな矢先に、なんと殺人事件が発生する――。 いわゆる『極限状況…

二人の友情の行く末をどう読み解くか――本と鍵の季節/米澤穂信

僕はこの日曜日を、なんとか他愛ない一日に引き戻したかった。無邪気な先輩に誘われて友達と遊んだ一日にしたかったのだ。 米澤穂信.本と鍵の季節(集英社文庫)(p.44).株式会社集英社.Kindle版. 所謂『日常ミステリ』と呼ばれるジャンルは、一般的なマーダー…