風花雪月っぽいRTS――The DioField Chronicle

前置き

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 シミュレーションRPGパートと3Dマップでの拠点探索パートを交互に進めていく形式の、FEも新作が発表された時節になってようやく現れた風花雪月フォロワーゲーム。公式HPを見るとゲームジャンルはSRPGと記載されているが、より厳密に言えばRTS(リアルタイムストラテジー)が正しい。

 コンシューマゲームの(それもソロプレイ専用で)RTSは珍しいため結構楽しみにしていたが、残念ながら期待に添うような出来ではなかった。

楽しみのない3Dマップの拠点パート

 ミッションの前後に存在する3Dマップでの拠点行動パートだが、風花雪月の場合は明るくて広い学園の中にたくさんのキャラがいてやることもたくさんあったが、このゲームは暗くて狭い屋敷の中で数人しかいないキャラに話しかけるだけなのだ。

 ゲーム進行の途中で屋敷の2階が開放されるが、2階に行っても特に新しい設備が増えたりできるごとが増えることはなく、ただキャラクターが2階にも出てくるようになるだけ。オブジェクトもただ配置されているだけで変化はない。このパートで出来ること自体もサブミッションの受注と装備の購入とキャラの会話ぐらいなら、わざわざ3Dマップでこれを実装する必要性を感じない。

 公式HPではグラフィックを推している記述が散見するが、キャラクターグラフィックは現代水準で言えば並程度*1なので、3Dマップをうろついてキャラクターを見る楽しみというところも特に満足が行く出来ではない。

3Dモデルの質感がのぺっとしてて、オブジェクト類と比較すると違和感が残る

 初めての拠点パートで探索している中、屋敷の2階への道が柵で雑に封じられているのを見たときの気持ちを、未だに説明することはできない。

 

薄いストラテジー要素

 RTSなのでユニットを分散させて攻め方を考えたり、フィールドの地形やオブジェクトを利用したりといったような戦略的な攻略を求められることを想定していたが、そんなものは一切なく、ただただ敵ユニットを前から一方的に倒していくだけですべてが解決してしまう*2

 回復魔法の性能が良すぎるためフロントが溶けることがほぼないことに加え、アンドリアズのアサシネーション(低EP/高火力/キル時にクールダウン解消)の性能が強すぎるせいで複数の敵も簡単に処理できてしまうので、躓くことがない。ハードかつ標準レベル以下でこうなるならレベルデザインの設定が甘いと言わざるを得ない。

 

 またミッションごとに条件を満たすと特別報酬が貰えるシステムがあるのだが、この特別報酬の条件も全ミッション共通で「誰もダウンせずにクリア」と「X分以内にクリア」となっており、ただ前の敵からすべて倒すというプレイでクリアできてしまう。レベルデザインが甘くとも、ここの内容設定を「特定キャラの出陣」や「ミッション中に特定の行動を強制させる」等工夫すれば多少なりストラテジー要素を出すことができたはずだが……。

 

展開に置き去りにされたキャラクター

 傭兵だったリアズたちが貴族を助けたことでお抱えの傭兵団に加入し、そこからどんどん成り上がって最後には国王とその騎士団になるという物語展開自体は、最近の流行も取り入れた結構面白い作りにはなっていた。ただ話の展開が早いことと、主人公のリアズが仲間にもプレイヤーにも隠し事が多いこともあって、「どうしてこういう展開になったのか」を理解するのが難しい場面が結構ある。

 ワルターもイスカもフレドも、物語展開上ああいうことになるというのは理解はできるものの、そこに至るまでのキャラクターの描写シーンは非常に少ない。またシーン自体もリアズが隠し事が多く内面の発露が少ないため意図や心情が理解しづらく、プレイヤー側が上手に読み取った上で想像して補完する必要がある。

 この物語のオチやリアズのキャラクター設定を考えればある程度は意図的にそうしているだろうとは思うが、普通にやってればクリアした後に結構な数の人間はぽかーんとしてしまうのではないだろうか。

 

物語の結末のネタバレを含みます

 最後の展開の直前の回想シーンでの内容「どんなことしようとも、何を犠牲にしようとも、第一の目的を達成することに決めたからだ。そしてもう一つの目的は、次の行動で叶う」という言に従えば、もう一つの目的である「正しいものに力を持たせること」に従った結果フレダを殺したということになる。

 ブルーフォックス自体「仲間をも殺す非情な群れ」であると称されており、ウズリム団長やヘンデ公が死んだのもリアズの策略であっただろうことを考えると、国王になってからのフレドの振る舞いに対するリアズの反応等を踏まえれば、リアズがフレダを殺す結論に至ったこと自体は理解はできる。

 理解はできるものの、フレダを殺すことになんの葛藤もなかったのか?フレダとの友情はその程度のものだったのか?フレダとの友情よりも上回る目的意識の由来はなんだったのか?等、本来あるべきキャラクターの行動としての描写が圧倒的に欠けているため、展開に対する納得感が薄い。

 

 全体的にキャラ描写は薄いが、中でも一番驚いたのはアイゼが物語本編の展開において一切の役割を担わされていないことだ。物語当初から存在しており、リアズとフレダの幼馴染という位置にいるなら、中盤以降に彼女がキーマンになってリアズとフレダの間に入る役割を担うことになるんだろうなと思いながらゲームを進めていったが、終ぞ彼女が何かをすることはなかった。特に物語のオチがああいう形になるなら、絶対アイゼをそこに絡ませるべきであるはずなのに、メインストーリー中に台詞の一つも出てこない。最初から存在する幼馴染の女の子という立ち位置のキャラクターが、本編の展開に終始一切関与しない途中加入のサブキャラクターと同じ扱いであるなんて誰が想像できただろうか?

 

 なお本編中で明らかにならなかったキャラクターに関する謎については、クリア後に書物の人物を見ると大体説明されているので、これを読めばストーリー中に匂わせたものの結局あれなんだったんだという部分については大体納得ができるだろう。とはいってもあのオチを見た上で再度続きから始めた上で書物を読むところまで至るプレイヤーはかなり少ないだろうし、普通にゲーム本編中に描写しろとも思う。

総評

 特定の一要素が悪いというよりは、全体を通して作り込みの甘さが目立つ作品。特にゲームシステムに関する部分はあまり物を考えて作ってる感じがせず、「風花雪月っぽいRTSを作って」と言われて渋々作っただけで、開発チームのやる気はなかったんじゃないだろうか。*3

 キャラクターは悪くないし展開も早いので伝記物として続きが気になる作りではあるし、リアズの言動がプレイヤーに対しても色々伏せていることが多いため、この先に何かあるかもという期待によって先に進めるモチベーションはあるものの、終わってみればその期待が叶うことはなく、ふり返って総評をつけるとあんまり面白くないなという印象だけが残るゲームになってしまうだろう。

 

 

*1:RTSパートの街並みのグラフィックは確かに綺麗だったが、3Dモデルの出来はイマイチ

*2:難易度はハードを選択したし、ミッションの推奨レベルは常に足りてない状態だったので、特別こちらのレベルが高すぎたわけではないはず

*3:でなければストーリーの分岐や隠しEDもなく裏ボスややり込み要素もないのに、味方のレベルや装備を引き継いだNewGame+において1週目と敵のレベルが同じなんてことはあり得ないだろう