ロールプレイする教祖――Cult of the Lamb

 

前置き

 近年人気ジャンルになりつつある『ローグライト』の魅力はいくつかある。ステージや敵が毎回ランダムであり、リプレイ性が高い点。プレイヤーキャラクターのステータスは毎回リセットされ、ステージ道中でランダムに手に入る武器やアイテム等を駆使して状況を打破していく対応力が求められる点。そしてランダム性がありつつもリソースは有限のため、繰り返しプレイすることでプレイヤー自身が知識によってより良い選択を行えるようになっていき、プレイヤー自身の成長を感じさせてくれる点。

 Cult of the Lambは、こういったローグライトとしての面白さを突き詰めた作品ではない。このゲームはローグライトのシステムに街づくりゲームの要素を掛け合わせ、それを『信者を集めて教団を作る』というダークな世界観設定でまとめたゲームだ。

 ローグライト要素と街づくり要素のそれぞれだけを抽出すると、それらに特化したゲームと比べれば見劣りする箇所も存在する。しかしそれを踏まえてもなお、このゲームでしか味わえないプレイ体験の面白さや中毒性といった独自の魅力が存在している。

ゲームシステムと噛み合った設定

 『旧き信仰』の司教に生贄として殺された主人公の羊は、封印された神である『待ち受けし者』から力を授けられ再び生を得る。『待ち受けし者』を封印した4人の司教を殺すため、教団を作り大きくしていく――というのが本作のストーリーラインだ。

 

 このゲームは大きく2つのパートに分かれており、『司教を殺す』パートがローグライトに、『教団を大きくする』パートが街づくりゲームになっている。司教を殺すためにダンジョンに向かい、その道中で資源や信者を獲得する。獲得した資源を使って教団の本拠地で開発を行い、教祖であるプレイヤーのパワーアップを行う。連れ帰った信者は本拠地の作業を割り振って自動化させたり、祈りを捧げさせることで発展のための力を集めることができる。

 

 『教祖になって教団を大きくする』世界観設定が、ローグライトと街づくりという2つのゲームジャンルを掛け合わせたこのゲームとしっかりマッチしているため、どちらの要素をプレイしているときも違和感なくロールプレイ体験を味わうことができる。

両方の要素を遊ばせる導線

 このゲームをある程度プレイすると、大抵のプレイヤーは拠点で開発しているパートの方が面白いことに気付くだろう。基本的にランダムダンジョンを戦闘するだけのローグライトパートに比べて、街づくりパートの方はやることが多い(=要素が多い)のだ。

 街づくりパートは拠点の開発だけでなく、集めた信者との交流の要素も存在する。信者は話しかけたり贈り物をすることで信仰レベルを上げることでより作業の能率が上がるため、信者一人一人と毎日会話してコツコツレベルを上げていく必要がある。教団が大きくなるにつれ10人20人と信者を抱えることになるので、これがどんどん大変になっていく。

 

 かといって拠点でずっと作業をしていると、今度は資源が足りなくなっていく。信者のための食事や開発のための資金、儀式のための骨の素材はダンジョンに向かわないと集めることができない。街づくりパートの方にのめり込んでいると、教団を大きくするためにダンジョンに向かっていたら司教を倒していたという手段と目的が逆転した感覚に陥るだろう。街づくりの方にハマったプレイヤーにも、ローグライト部分をプレイする導線を作れている。

待ち受けし者も、『目的を忘れるな』としっかり警告をくれたりする

選択によるロールプレイ感の向上

 ローグライトではランダム要素に伴う選択が求められるシーンはよくみられるが、街づくりパートにおいても選択が求められる箇所がある。

教団で発行する教条は、異なる2つの内容のどちらかのみを布告できる

死んだ信者は墓を作って埋葬してもいいし、死体の肉を食料として利用してもいい

 これらの選択肢は基本的には『信者の信頼を深め信仰を得る内容』と『利得を重視して信者から搾取する内容』での択一となっており、選択によって『どういう教団を作りたいか』というロールプレイを意識させてくれるような作りになっている。

 シナリオ面でも選択の要素は取り入れられている。信者を集め色々な世話をして――時に邪魔な信者をこっそり殺したりしながら――大きくなった教団の力により、4人の司教の殺害に成功したその時。最後の扉を開きいよいよ復活した『待ち受けし者』と対面すると、「我の最高の信者である貴様を贄とし、我の復活の儀式を行う」と宣言される。

 元々『待ち受けし者』から与えられた力であり、彼の復活を目的として作り上げた教団だった。しかしその教団をここまで大きくしたのは紛れもなくプレイヤー自身だ。ここに至るまでの様々な苦労を思い返しながら考える。果たしてこのまま従って生贄になるべきなのだろうか、あるいは――。

 

総評

 総じてゲームシステムと設定の噛み合いにより、『教祖となり教団を作って大きくしていく』というロールプレイに入り込みやすい作りになっている点がこのゲームの魅力だろう。ゲームシステムと設定が噛み合っているゲームは須らく面白いのだ。

 

store-jp.nintendo.com