何故モンハンのストーリーに興味が持てないのか――モンスターハンターライズ サンブレイク

 これはモンスターハンターライズのクエスト選択画面の2ページ目だが、この中の『依頼内容』の欄にそこそこの文字数を使って書かれているこのクエストの説明文を、ちゃんと読んだことのあるプレイヤーはどのくらいいるだろうか?私は一度も読んだことがない。

 何故読まないのかと問われれば、それはこの文章がただのフレーバーでしかないことを知っているからだ。このクエストの依頼主である『木の上の旅人』はゲーム中には出てこないし、このクエストをクリアした後にこの人物がどうなったかがわかるような情報が出ることもない。一般的なRPGにおけるクエストの『対面するキャラクターから依頼を引き受け、クリアしてお礼を言われる』という形式から、前後の文脈を取り除いて『依頼内容』だけ出されているから、そこに実像を感じられないのだ。

 『クエスト』という名前が付いているから勘違いしてしまうが、モンハンにおけるクエストとはつまり『アクションゲームのステージとボス選択』だ。モンハンというゲームが特に『特定のモンスターを何度も狩猟する』ようにデザインされたゲームである以上、このステージとボス選択が制限されることはプレイヤーにとって不便でしかない。

 しかし厳密にリアリティを追及するなら、上のようなクエストは二度受注できるべきではないし、希少性のあるモンスターを、同じクエストを繰り返すことで何度も倒せるべきではない。『システムの快適さ』を優先した結果、世界観やモンスターの設定と矛盾する形になってしまっていることが、リアリティを欠如させているのだ。

8月のアップデートで追加された『希少種』リオレイアリオレウスも、クエストを受ければいつでも何度でも戦うことができるため、希少性はどこにも存在しない。

 近年のモンスターハンターシリーズは『モンスターを狩猟して素材を集め、武器や防具を作る』ゲームだと定義され、そこの楽しさや面白さを追求する方向にゲームシステムが構築されるようになった。それ自体は良い方向に改善されているし、古くからモンハンに触れてきたユーザーの求めるニーズとも合ってはいるだろう。ただそれによりプレイヤーの意識もその方向に引っ張られた結果、モンスターハンターの世界観やキャラクター、シナリオといったものは全て張りぼてのフレーバーで興味の沸かないものになってしまった。

 拠点にいるキャラクターは『施設』の役割を持つだけの木偶で、施設としての役割を持たないNPCには話しかけることはない。シナリオもありはするもののそのすべてが『強いモンスターが出たから倒してくれ!』でしかないので、詳細な内容に興味は沸かず、会話はA連打でスキップしてしまう。欠如したリアリティが、あらゆるフレーバーを些末なものとして興味を失わせてしまうのだ。

 

 

 しかし今回の『サンブレイク』で追加された要素の中に、この認識を覆す新しい試みが存在した。『盟勇クエスト』だ。盟友同行クエストではクエスト選択時にキャラクターを2名まで選び同行させることができる。同行したキャラクターは一緒にモンスターを攻撃してくれるので、キャラクター達とマルチプレイをやっている感覚で楽しむことができる。

 細かいところではあるが、キャラクターに使用可能武器が設定されているところもキャラクター性の表現に繋がっている。

 キャラクターは狩猟中頻繁に声をかけてくれる上、キャラクター同士のチャットが発生することもある。キャラクター同士の会話により関係性が見えることで、一気にキャラクターに厚みが増すことになる。

 施設にいるだけのキャラクターは木偶でしかないが、フィールドに出て一緒に狩りをしてくれるキャラクターになることで一気にリアリティを増す。

 盟友クエストはソロプレイ専用のクエストだが、マルチプレイ可能な一般クエストにおけるラスボス戦のクエストにおいても、特例的に『フィオレーネ』が同行する形式になっている。一緒に戦ってくれるだけでなく、ラスボス戦の特殊アクションに対する助言をしてくれたり、演出やムービーでこのフィオレーネが活躍するシーンが挟まれたりすることで、フィオレーネと一緒に戦っている感覚でクエストを盛り上げてくれる。

 

 『モンスターハンターワールド』『モンスターハンターライズ』と、近年のモンハンシリーズは特に『従来のモンハンらしさ』に囚われず不便なシステムにメスをいれる取り組みが続いているように見える。その結果として『アクションゲームとしての面白さ』という方面においては、過去一番の出来と言えるだろう。

 ならばこそ次のモンハンシリーズはシナリオや世界観、キャラクターを尊重するような形で従来のシステムに手を加えられることを期待したい。